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息切れしない日常生活
日常生活での工夫のポイント
肺線維症の患者さんでは、息苦しさによって日常生活が制限されることがあります。息苦しさをやわらげる工夫をすることで、より快適な生活を送ることができます。動くことを避けるのではなく、息苦しさを避ける工夫をすることが大切です。以下のポイントに注意して、日常生活の中でさまざまな工夫をしましょう。
- 息苦しい動作をやめてしまうのではなく、できる範囲で動いて体力を維持しましょう
参考:からだを動かす(呼吸リハビリテーション) - 息切れを起こしやすい4つの動作を避ける工夫をしましょう
参考:息切れを起こしやすい動作 - ゆっくりと動くことを心がけ、途中に休憩を入れるなど無理をしないようにしましょう
- 動作は、できるだけ座ったままで行うとよいでしょう
実践編:息切れをやわらげる工夫
ここでは、入浴や身支度、洗濯、掃除など日常生活のさまざまな場面でできる、息苦しさをやわらげる工夫をご紹介します。腕を上げる、おなかを圧迫する、一時的に息を止める、手や腕の動きをくり返すという息切れを起こす4つの動作を避けることが基本になっています。ご紹介する以外にもさまざまな工夫ができますので、ご自身に合った工夫をみつけましょう。また、患者会などに参加することで、同じ病気を持つ患者さんやそのご家族の方と「生活の工夫」について情報を交換するのもよいでしょう。
ポイント!
- 息苦しさなどの症状が軽いときは、できる範囲で体を動かして、体力を維持することが大切です。息苦しさを感じない動作は、体調に注意しながら続けましょう。
参考:からだを動かす(呼吸リハビリテーション) - 息苦しさを感じやすい動作は人によって異なります。また、体調や病気の状態によって、工夫の仕方や必要性が異なる場合があります。気になることやわからないことは医師や看護師などに相談してください。
入浴のときは、腕を上げる、動作をくり返す、息を止めるなどの動作をしがちです。頭やからだを洗う際、湯船につかる際の工夫を実践してみましょう。
- 浴室と脱衣所の温度差が少なくなるようにヒーターなどを用いる
- 脱衣所に椅子をおいてゆっくり着脱する
- なるべく肩より上に腕を上げない
- 両手を上げず、片手で半分ずつ洗う
- 息を止めず、ゆっくりと洗う
- シャンプーハットを使って、水が顔にかかって息を止めるのを防ぐ
- おなかを圧迫せずに座れる高さの椅子に座る
- 長めのタオルを使用して、なるべく肩より上に腕を上げない
- ゆっくりと洗う
- 必ず呼吸をととのえ、休憩を取りながら行う
- 椅子などを使って、おなかを圧迫せずに入れる高さにする
- お湯は胸より下になるようにする
- 肩や首が寒いときはバスタオルを用いて冷えないようにする
排便のときは、力を入れて息を止めがちです。力を入れすぎず、呼吸に合わせて排便を行うことを意識してみましょう。また、便が出にくい場合は医師に相談しましょう。
- 力を入れはじめる前に呼吸をととのえる
- ポイント!息を吐きながら排便する
- 一気に力を入れずに、徐々に力を入れていく
- 力を入れるときも息を止めない
- 排便が終わったら、ゆっくりと休んで呼吸をととのえる
- 後始末は呼吸がととのってからゆっくり行う
くつ下をはいたり、着替えをするなどの身支度のときは、腕を上げたり、おなかを圧迫する姿勢になりがちです。また、歯をみがくなど同じ動きをくり返す動作にも注意が必要です。
- からだを丸めておなかを圧迫しないよう、椅子に座る
- 前かがみにならないように、足を組んでくつ下をはく
- ポイント!頭からかぶる服よりも、前開きの服を選ぶ
- なるべく肩より上に腕を上げない
- 前かがみにならないように、椅子に座って着替える
- 腕を上げるときは息を吐きながら上げる
- 余計な力が入りがちなので注意する
- 椅子に座って、洗面台にひじをついて行う
- 動作が速くならないように、呼吸に合わせてゆっくり行う
- 腕を動かさなくてよいように、電動歯ブラシを使う
掃除や洗濯は、肩より上に腕を上げたり、くり返し力を入れることが多い動作です。息苦しさを感じるときは、1日に多くの家事を片づけようとしないで、1週間や1ヵ月の予定を立てて計画的に行いましょう。
- 高さや長さを調節し、おなかを圧迫しないように、かがまないようにして掃除をする
- 動作は、ゆっくりと行う
- 洗濯物は、椅子に座ってゆっくりとハンガーにかける
- 洗濯物を椅子の上に置いて、高さの調整をして干す
- 物干しの高さを、肩より上に腕を上げなくてよい高さに調整する
- 干すときは、呼吸をととのえながらゆっくりと行う
日常生活を送るうえで、息切れを起こしやすい4つの動作が避けられるような家具を選ぶことは、無理なく工夫をすることにつながります。肩より上に腕を上げずに使えたり、おなかを圧迫しない姿勢がとれるような家具を選ぶとよいでしょう。
- 普段着は、肩より上に腕を上げずにかけられる高さにする
- よく使うものは肩より上に腕を上げずにとれる所に収納する
- 食卓を、ひじをついてご飯が食べられる高さにする
- クッションなどで座面の高さを調整する
- おなかを圧迫せずに洗える高さの椅子にする
- 浴槽に椅子を入れて湯船の高さを調整する
外出するときは、息苦しさをやわらげる動作を心がけ、ゆっくりと動きましょう。また、外出先で呼吸が苦しくなったときは、呼吸をととのえる姿勢や休憩をとりましょう。
- 急がずに、ゆっくりと歩くなど、余裕を持って行動する
- 息苦しさを感じているときなどは、階段ではなく無理せずエスカレーターなどを使う
- 息苦しくなったときは休憩し、呼吸をととのえる姿勢をとる
- 自分にとって楽になる姿勢を覚えておく
風邪などの感染症にかかると、急激に呼吸状態が悪化してしまうことがあるため、予防を心がけましょう。感染症にかかった場合はすぐに主治医に相談しましょう。
- 人混みを避け、マスクを着用する
- マスクは鼻まで覆うように着用する
- マスクはあまり触らないようにする
- 手洗いうがいをこまめに行う
- 必要に応じて手指の消毒を行う
- インフルエンザや肺炎球菌の予防接種を検討する
良質な睡眠をとることは、心身のリフレッシュにつながります。十分な睡眠をとって、規則正しい生活を心がけましょう。
- 寝る前は、スマートフォンなどの電子機器の使用を控える
- 夕食を食べてから、就寝するまでの時間をあける
- 呼吸をととのえる
- 午後や夜はカフェインを多く含む食品を控える
カフェインを多く含む飲み物の例:コーヒー、緑茶、清涼飲料水、紅茶などの一部
- 同じ時間に就寝・起床し、睡眠リズムをととのえる
- 適度な運動を行い、睡眠の質を改善する
旅行の期間や場所などによって、注意が必要な場合があります。気になることがあれば、主治医に相談しましょう。酸素療法を行っている場合は、酸素がなくならないよう十分用意しましょう。必ず事前に医師やメーカーに相談してください。
- 高い所は気圧が下がり、酸素が薄くなり肺に負担がかかる
- 極端に暑かったり寒かったりすると、咳や息切れに影響する可能性がある
- 感染症の流行や花粉などにも気をつける
- 上り下りが多い場所に行くときは、移動手段に気をつける
- 車移動や必要時は車いすを使用する
公立陶生病院
副院長 兼 呼吸器・アレルギー疾患内科 部長 近藤 康博 先生
看護師 土井 ひとみ 先生
理学療法士 渡邉 文子 先生
作成年月:2021年9月